日本のハーブ
「カンゾウ(甘草)」は、
ショ糖のおよそ150倍の甘味を有すると言われる
「グリチルリチン酸」を多く含む、文字通り「甘い草」で、
洋の東西を問わず、紀元前から薬用として、
または醤油や菓子、煙草などの甘味料として、利用されています。
甘草・リコリスとは
「カンゾウ(甘草)」は、マメ科の多年草で、
ストロン(匍匐茎)を伸ばし、小枝のような根を大きく広げます。
草丈は約1mになり、初夏に薄紫色の美しい花を付けます。
甘草は砂糖の50倍~80倍の甘みがある植物です。
主に根を乾燥させ、そのまま煮出して甘草湯にしたり、
粉末を甘味料として使います。
カロリーが低いので、欧米では自然な添加物と言われていて、
お菓子やソフトドリンクに使われています。
英語名の「リコリス」は、
ギリシャ語の
「グリキス(Glykys=甘い)」と「リザ(rhiza=根)」の
合成語「グリキルリザ」に由来していて、
後に変化したものと言われています。
歴史
「甘草」は、世界各地で古代から薬用として広く用いられてきました。
紀元前には、医学の祖・ヒポクラテスの全集に記載されたり、
エジプトのツタンカーメンの墓からも
大量のカンゾウ(リコリス)の根が出土しています。
その他、胃ガンの家系だったフランスのナポレオンは、
いつもカンゾウ(リコリス)を噛んでいたとの
記録が残っています。
日本には奈良時代に伝えられたようで、
正倉院の御物中にも保蔵されています。
明治以降、外国から砂糖が輸入されるようになるまで、
甘草は漢方薬として利用された他、
調理の際の甘味料としても重視されてきました。
江戸時代には、
幕府は農民に対して甘草を栽培するよう命を下していたほどで、
中でも江戸に近く、気候的にもそれほど強い風が吹かず、
しかも高原型で乾燥している甲斐の国(山梨)は、
甘草栽培の最適地だったようです。
この地で、江戸幕府に納める甘草栽培をしていた
「高野家」の屋敷は、
八代将軍徳川吉宗に甘草を納めていたことから、
「甘草屋敷」とも呼ばれ、
重要文化財旧高野家住宅(別名:甘草屋敷)として、
山梨県の塩山駅近くに保存されています。
甘草の効果
リコリスの根には
グリチルリチンやフラボノイド(イソフラボノイド)という
成分が含まれており、
それらは強い抗酸化作用や甘味を含有しています。
抗アレルギーや去痰作用があり、
喘息や気管支炎などの
呼吸器系の炎症を鎮める効果があると期待されています。
こうした効能だけではなく、
他の薬とよく調和することも、
使用頻度の高さに繋がっているようです。
- 学 名:Glycyrrhiza uralensis
または
Glycyrrhiza glabra - 英 名:リコリス
- 科 名:マメ科
- 使用部位:根、ストロン
- 薬 効:鎮静、緊張緩和、鎮痛、去痰、咽痛、
温補、健胃、強壮、止瀉 - 安 全 性 :2b、2d
妊娠中は、医療従事者監督下以外での使用禁止。
高血圧、肝障害、浮腫、重度の腎不全、
低カリウム血症、浮腫を伴う心疾患、
うっ血性心不全を持つ人の使用禁止。 - 相互作用:B
標準的な治療容量では相互作用は予測されない