Anise seed(スパイス事典)
古代エジプトから伝わる甘くスパイシーな種子
アニスシードは古くから使用されている
スパイスのひとつです。
葉はハーブとして食されます。
スパイスに使われる種の甘い香りは、
主成分の「アネトール」によるもの。
インドでは、口臭予防として食後に口にする習慣があります。
また、夏は茎の先に傘状に白い小花をつけるので、
鑑賞用としても楽むことが出来ます。
アニスの歴史
「アニス」はギリシャやエジプトを原産地とするセリ科の植物です。
紀元前4000年頃、古代エジプトにおいて
王族や貴族が逝去した際に、
遺体の防腐処理やミイラとして保存するために使われていました。
その後、消化不良を防いだり、口臭を抑えたりするために、
食後のお茶やお菓子に使用されるようになりました。
古代ギリシアの時代には主に薬草として扱われ、
母乳の分泌を促進する、
あるいは分泌期間を延ばすものとして信じられてきました。
また、魔除けとしての効能を持つとも信じられていたとも
言われています。
古代ローマ人は胃もたれを解消するため、
アニスケーキを宴会のデザートとして食したと言われています。
この風習はウエディングケーキの由来となっています。
イギリスでは、修道院でしかアニスが栽培されておらず、
高価なスパイスとして輸入されていました。
1305年にエドワードⅠ世が
ロンドン橋を通過するアニスに特別税を掛け、
その税金がロンドン橋の修復費用に充てられたそうです。
日本には明治初期に伝来し、現在でも少量栽培されています。
スパイスの特徴
香りや風味
「アニスシード」は個性的な甘い香味が特徴ですが、
これは「アネトール」という香り成分が含まれているためです。
この甘い香りは、
「フェンネル」や「甘草(リコリス)」などのハーブの香りに
似ていると言われています。
甘いだけでなく、最後には爽やかな香りを楽むことが出来ます。
甘い香りのアニスシードの精油は、
製菓、リキュール、スープ、ドリンクなどの
フレーバーとして添加されている他、
化粧品や香水などにも使われています。
ただ、アニスの香味は空気に触れると変わりやすく、
すり潰すと直後から風味を失い始めるため、
アニスシードをそのまま保存しておき、
使う分だけをすり潰して使うのが一般的です。
効果や薬効
アニスには消化を促す作用があるため、
食べ過ぎた後に摂ると胃もたれの予防になります。
食後のだるさを緩和したり、
腸内に溜まったガスの排出を助けてくれたりします。
食物繊維が豊富なので、便秘の改善効果も期待できます。
また、「利尿作用」があるため、
「むくみ」や「残尿感」の改善が期待出来ます。
「エストロゲン」という女性ホルモンと似た働きをするため、
アニスを摂取することで更年期障害を軽減したり、
ホルモンバランスを整えたりする効能が期待出来ます。
他には、去痰作用、消臭作用、鎮痙作用があります。
データ
使い方・代表的な料理
産地
アニスシードは原産地であるギリシャやエジプトの他、
メキシコやインドなどで栽培されています。
特に「ロシア産」や「ブルガリア産」、「ドイツ産」のものが
品質が良いと言われています。
美味しい利用法
アニスシードは上品な甘い香りが持ち味。
クッキーやケーキなどの焼き菓子の風味づけに向いています。
オランダでは、赤ちゃんが生まれると、
チョコレートでコーティングしたアニスシードを
ビスケットに載せたお菓子「ベスハウト・メット・マウシェス」を
客に振る舞う習慣があります。
その甘い風味を生かして、
アルコール類の風味づけにも使われています。
トルコの「ラク」やギリシャの「ウゾ」などがあります。
これらはアルコール度数が40度にも達する強いお酒で、
無色透明なのに水で割ると、テルペンという成分が水に反応して、
たちまち白く濁るという不思議なお酒です。
また、ホットワインを作る時にも、
アニスシードは赤ワイン、白ワインに向きます。
フルーツとの相性も良いので、
洋梨やリンゴ、桃のコンポートを作る時に、
シナモンやクローブと一緒に煮ると美味しくいただけます。
ホール
薄茶色の筋が入った
小さな種には、
細い茎がついた状態のものもある |
パウダー
赤みを帯びた茶色。
パウダーは少量の使用にしましょう。
使い過ぎに注意。
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アニス(セリ科)と混同しやすいハーブ
● アニスヒソップ(シソ科)
紫の花が可愛らしいミントの仲間です
● スターアニス (シキミ科)
「八角」とも呼ばれる中華料理などに使われるスパイス
関連
アニスティー |
アニス精油 |