からだに優しいもの

とにかく、優しいものです。

5月「菖蒲湯」

お風呂
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「端午の節句」に欠かせない「菖蒲」。
「菖蒲」は昔から、その爽やかな香りが
邪気や悪鬼を払うと信じられていました。
そのため「端午の節句」には、厄払いと
その後の健康を願って無病息災の祈りを込め、
軒に吊るしたり(「軒菖蒲」(のきよもぎ))、
「菖蒲湯」に浸かりました。
 
「軒菖蒲」(のきよもぎ)
菖蒲と蓬(よもぎ)を束ねて、
軒下に吊るしておいたものです。
蓬も菖蒲同様、
強い香りが邪気を払うとされていました。
地方によっては、
菖蒲湯に蓬を入れる地方もあるとのこと。
但し、蓬には陣痛作用があることから、
妊婦さんは注意が必要です。
 
 

菖蒲湯の由来

蘭湯(らんとう)
古代Chinaでは「端午の節句」になると、
「蘭湯」(らんとう)に入る風習がありました。
「蘭湯」(らんとう)とは、
蘭草の葉を入れて沸かしたお風呂のことで、
肩こり・神経痛・皮膚の痒みなどに効果があると
言われています。
「蘭」という名が付いているので、「ラン科」の植物ではないかと想像してしまいますが、
実はキク科の植物です。
漢字「蘭」の字義は
古くは芳香のある植物を意味したそうで、
「蘭」は「フジバカマ」であったとされています。
 
旧暦の5月は、
伝染病の流行や害虫被害などが多いため、
古代Chinaの人々は邪気払いのために
「蘭湯」に入ったのだそうです。
 
「菖蒲湯」になった理由

 
この風習が日本にも伝わったものの、
日本には肝心の「蘭草」(らんそう)が少なかった
ことから、「蘭草」の代用となったのが、
日本人にとって身近な「菖蒲」でした。
独特な強い香りを持つ「菖蒲」は、古くから
厄除けや清める力があると信じられてきた
植物です。
 
「藤袴」(ふじばかま)
「秋の七草」の一つで、小さなピンク色の
可愛らしい花を多数つけます。
新鮮な葉を揉むと爽やかな香があり、
乾燥させると更に強く芳香を放つように
なります。
花期に地上部の全草を刈り取り、
乾燥させたものを「蘭草」と呼びます。
『万葉集』にも歌われ、
『源氏物語』にも登場しますが、
近年は土地開発や河川改良工事による
環境の変化から、その数が激減したため、
環境省では平成30(2018)年に「準絶滅危惧種」に指定しました。
 
 

菖蒲湯に入れるのは
「ショウブ科」の「葉菖蒲」

「端午の節句」に飾る花と言えば、
「菖蒲」の花です。
お風呂に入れる、ほんのり良い香りの
「菖蒲」は「葉菖蒲」で、
実は全く別の植物です。
 

観賞用として楽しまれる「花菖蒲」は、
ショウブに葉がよく似ていたことから、
「花ショウブ」と呼ばれるようになった、
学名を「Iris ensata var. ensata」という
「アヤメ科」の植物です。
こちらには薬効はありません。
江戸時代に野生の「ノハナショウブ」が
盛んに品種改良されて、
各地に菖蒲園も出来ました。
似た花として、「アヤメ」と「カキツバタ」が
よく取り上げられます。
 

 
一方、お風呂に入れる「葉菖蒲」は、
学名は「Acorus calamus」といって、
「ショウブ科」
(分類体系によっては「サトイモ科」)の
植物です。
古くから薬草や漢方薬としても使われ、
『万葉集』にも登場しています。
池などの水辺に群生しており、
花はとても地味です。
 

菖蒲湯の効能

 
「菖蒲」、特に根茎部分の
「菖蒲根」(しょうぶこん)は薬効が高く、
精油成分が約3%含まれています。
主な成分は、鎮痛や抗菌の作用を持つ
「オイゲノール」、
健胃などの作用を持つ「アサロン」などで、
古来、インドやヨーロッパ、Chinaなどでも
重要な薬草として珍重されてきました。
 
また菖蒲湯の効能はそれだけではありません。
リラックス効果・血行促進・肩こり・腰痛予防・
冷え性・筋肉痛・リウマチにも効果があると
されてきました。
 

 
菖蒲を頭に巻くのはなぜ?
「頭に菖蒲を巻くと頭が良くなる」と言われ、
菖蒲湯に入った時に、
葉を鉢巻のように頭を巻く習慣もあります。
これは「菖蒲を巻いたところが良くなる」
という言い伝えによるものです。
 
頭に巻くことで
邪気が入らないので頭が良くなるとか、
血液の循環がより活発になるので
頭に巻くと頭が良くなると言われています。
 
「菖蒲を巻いたところが良くなる」ので、
お腹などに巻いても良いのかもしれませんね。
 

菖蒲湯の作り方

「端午の節句」に、厄払いを目的として
「菖蒲湯」はいかがですか?
本来は、菖蒲の「根」の部分に
血行促進や疲労回復の効果があるのですが、
「菖蒲根」は手に入りにくいので、
今回は「葉」を使った菖蒲湯の作り方を
ご紹介します。
 
菖蒲湯の作り方は意外と簡単です。
5月5日頃になると
スーパーや八百屋さんに並ぶ菖蒲を
10束程にまとめて、42~43℃程の
熱めのお湯に浸けるだけです。
 
1.花屋さんか八百屋さんで
  菖蒲を買ってきます。
  この時期になると、
  菖蒲を仕入れているお店が多いので、
  比較的手に入りやすいです。
 
2.精油の多い菖蒲は、乾燥すると
  成分が揮発してしまうので、
  そのまま使用します。
  タオルや綿の袋に、細かくした葉を
  ひとつかみほど入れます。
 
3.熱湯を注いで10分程置き、
  精油を抽出します。
 
4.袋を洗面器などに入れ、
  熱湯を注いで10分程置き、
  精油を抽出します。
  この時、火傷に十分ご注意下さい。
 
5.袋と抽出液を浴槽に注ぎ入れれば、
  「菖蒲湯」完成!
 
これでもちょっと面倒だなあと思う方は、
菖蒲の葉を刻んで煮出して煎剤にするか、
ティーバッグなどに入れて浴槽に浮かべても、
香りを移すことが出来ます。
 
ひげ根を取った根茎(があるなら)を
細かくし乾燥させたものは、
更に効果が高いとされます。
 
 
注意!
「菖蒲湯」には、アレルギーを引き起こす成分は確認はされていないのですが、痒みやかぶれが出たという声もありますので、心配な方はやめておいたほうが良いでしょう。
 
また、生後間もない赤ちゃんは、まだ肌のバリア機能が出来上がっていないため、肌荒れを起こす可能性があります。
入れる場合には、短時間にとどめて、最後に体を洗い流してあげましょう。
 
妊婦さんにとって、「蓬」(よもぎ)には
陣痛を促進する作用があるため、
蓬をセットで入れるのは避けて下さい。