アロマテラピーの歴史
古代から人々にとって植物の香りは身近な存在でした。
紀元前3000年頃の古代エジプト文明では、
「薫香」(お香)や「浸剤」(ハーブティーやハーブオイル)として利用したり、
ミイラづくりには乳香(フランキンセンス)や没薬(ミルラ)などの精油が
使用されたりしていました。
11世紀にのアラビアでは、イブン・シーナがバラの花から
「芳香蒸留水」を作ったと言われています。
十字軍の出現により東西交流が発展したことで、
様々なハーブが取り引きされたり、「蒸留」の技術がヨーロッパに伝わりました。
「アロマテラピー」という言葉は、
1930年頃にフランスの調香師・香料研究者のルネ=モーリス・ガットフォセが
「芳香(アロマ)」と「療法(テラピー)」組み合わせて作った造語です。
以来、今日に至るまで、世界の様々な国や地域で、
リラックス効果、体調不良の改善、心身の強壮などを様々な効果を得るために、
アロマテラピーが利用されています。
古代
古代エジプト
香りは神に捧げる神聖なものとして、
「乳香」や「没薬」といった樹脂が「薫香」という形で用いられ、
ミイラを作る際にも香料が用いられていました。
パピルスの文書
- 紀元前1700年頃。
- アロエなど約700種類のハーブが記録。
- うがい薬や湿布などに使用。
『旧約聖書』~ソロモン王とシバの女王の逸話
- 乳香や白檀(サンダルウッド)などの香料
古代ギリシャ
薬草による治療は体系化された医学という色彩を帯び始めます。
医学の祖・医師ヒポクラテス
- 体液病理説
- 400種類にも及ぶハーブの処方
- 今で言う「芳香浴」の効能にも言及
テオフラストス
植物の分類を行う。著書『植物誌』には500種に及ぶ植物が記載。
アレキサンダー大王の東方遠征
- 多くの香辛料や香木などが行き来
- フランキンセンス(乳香)
古代ローマ
新約聖書の逸話
- 東方の三賢人(博士)・・・「黄金」「乳香」「没薬」
- ナルドの香油
チベット地方原産の「スパイク・ナルド」という植物を
油に浸出させたもの
皇帝ネロ
- バラの香油
- テルマエ
ディオスコリデス(皇帝ネロの軍医)
- 『マテリア・メディカ(薬物誌)』
約600種の植物が収載され、
植物の生育地やその効能、薬としての調合方法などが
記されている。
プリニウス
- 『博物誌』
ガレノス
- ガレノス製剤(コールドクリーム)
『神農本草経』
- 2~3世紀の漢の時代にまとめられた、China最古の本草書
- 『神農本草経集注』(しんのうほんぞうきょうしっちゅう)
5世紀末、陶弘景により『神農本草経』が再編纂、
730種の薬石が記載
アーユルヴェーダ
- 古代インドで、今から約3000年以上前に誕生
- 『リグ・ヴェーダ』に約1000種類の薬用植物
- インド、スリランカを中心に現在も受け継がれている
中世
アラブ人の医師、イブン・シーナー(アヴィセンナ)
錬金術の技術から蒸留方法を確立→今のアロマテラピーの基礎
十字軍の遠征
東西の薬草、アラビアの医学や精油蒸留法のヨーロッパへの広がり
中世ドイツの修道女ヒルデガルト
治療のためのハーブの活用法に関する著書を残し、
現在のドイツの植物学の基礎を築いたと言われている。
サレルノ医科大学
医師の国家免許ともいえる制度が始められた。
ハーブの利用
ハンガリアン・ウォーター
ハンガリー王妃の水、若返りの香水で、
「ローズマリー」を用いたハーブチンキを使用した王妃が若さを取り戻し、
若きポーランド王に求婚された
ペスト(黒死病)の流行の対策
- ポマンダー:魔除けのためにクローブなどを詰め込んだもの
- 4人の盗賊たちのレシピ(ハーブビネガー)ローズマリー、タイム、セージ、ラベンダー、ミントなどのハーブを 酢に漬け込んで作ったもの
近世
大航海時代
コロンブスの「新大陸の発見」、ヴァスコ・ダ・ガマの「インド航路開発」など、
ポルトガルやスペインの舟がヨーロッパと新大陸、更には東洋の間を行き来し、
多くのスパイスやハーブがヨーロッパへと持ち込まれた。
ハーバリストの活躍と植物の分類
14世紀のイタリアで始まったルネッサンスがヨーロッパ各地に広まり、
印刷術の発展により薬用植物に関する書物の出版が盛んになり、
「ハーバリスト」と呼ばれる人も多数登場。特に、英国で。
- ジョン・ジェラート
- ジョン・パーキンソン
- ニコラス・カルペパー など
プラントハンターの活躍
- ジョセフ・バンクス など
香料産業の発展
- 香水の都・グラース・・・香水や香料
- ケルンの水「オーアドミラブル=すばらしい水」
カール・フォン・リンネ
植物を「学名」で分ける分類体系の基本が作られたことにより、
同じ植物に複数の名前が付けられたり、言語による呼称の違いにより
混乱する問題の解決に寄与。
近代
科学的アプローチ
- 19世紀には、薬用の植物から次々と有効成分が分離精製されるようになる
- 同じ成分を石油や石炭などの鉱物原料から合成出来るように
- 近代的な化学工業の技術により、植物からではなく、化学工業的に色々な作用や効果のある薬や香料が作り出されるようになった
現代
フランスの化学者、ルネ=モーリス・ガットフォセ
- 実験中の事故で負った火傷の治療に「ラベンダーの精油」を使用
- 精油の治療効果の研究に没頭
- 1937年、研究をまとめた著書『Aromatherapie』を出版
- 「アロマテラピー」という造語を命名
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フランス人の軍医、ジャン・パルネ
- 第二次世界大戦中、 薬が不足した時、は精油を治療のために広く用いた
- 著書『AROMATHERAPIE』(1964年)
- 彼の功績によりフランスでは精油を薬として用いる方法が研究され始めた
伊医師・ジョバンニ・ガッティとレナート・カヨラ
- 1920年代から1930年代にかけ、精油の心理作用とスキンケアへの応用について幅広く研究。
パオロ・ロベスティ
- 1970年代、オレンジ、ベルガモット、レモンなどの「柑橘類」を原料とした精油や加工品が、神経症やうつに効果があることを発見。
オーストリア出身の生化学者、マグリット・モーリー
- ホリスティック・アロマテラピー精油を植物油に希釈したオイルでのマッサージを提唱し、一般に広める。
- 1961年『ル・キャピトル・ジェネス(最も大切なもの・・・若さ”the Secret of Life and Youth”)』を出版。
- ホリスティックアロマテラピー
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ロバート・ティスランド
- 英国人のホリスティックアロマセラピーのリーダー的存在。
- 1977年、『The Art of Aromatherapy』を発表。
→ アロマセラピーが大流行するきっかけとなる。
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ミシェリーン・アーシェ
「嗅覚システムの組織とにおいの受容体」がノーベル医学生理学賞受賞
- リチャード・アクセル博士とリンダ・バック博士
- 「におい」がどのように識別され記憶されているのかのメカニズムが解明。
日本における精油の研究
- 東邦大学の鳥居鎮夫名誉教授
- 「随伴性陰性変動(CNV)」という脳波を用いて、香りの心理的効果の研究
- ラベンダーやジャスミンの香りの鎮静作用や興奮作用を実証した実験
日本のアロマの歴史
- 香りの伝来
「595年(推古天皇3年)に淡路島に香木が漂着した」(『日本書紀』) - 香道
- 1980年代頃
英国式のアロマセラピーのブーム。
芳香浴やトリートメントを中心に、アロマセラピーに関する出版物が出始める。 - 1990年代頃
メディカルアロマセラピーも注目を集め始め、医療現場でも活用され始める。 - 2012年4月、環境省認可公益社団法人日本アロマ環境協会(=AEAJ)
- 最近
趣味として楽しむだけではなく、お仕事、リラクゼーションビジネスとして、
アロマテラピーが更に広がる。