からだに優しいもの

とにかく、優しいものです。

ナツメ(棗)

Jujube(日本のハーブ)

f:id:linderabella:20201029124125j:plain

 

棗(なつめ)とは

クロウメモドキ科ナツメ属の落葉高木で、
葉は卵型で光沢があります。
他の樹木より遅く、
初夏になってやっと芽を出すことから、
「ナツメ(夏芽)」と呼ばれるようになったと
伝えられています。
 
 
「ナツメ」は漢字で「棗」と書きますが、
これは「ナツメ」の枝の節々から出ている
2本の「棘」(トゲ)から来ています。
この棘で害虫や鳥から種を守っています。
 
 
食用にするのは「果実」で、
花が咲いた後に楕円形の実をつけます。
初めは淡緑色ですが、
熟してくると赤から赤褐色になります。
茶道で抹茶を入れる器を「棗」と呼ぶのも、
この実に形が似ているからです。
 
 
中国では五果のひとつとされ、
「1日に3粒のナツメを食べると、
 一生老いない」と言われ、
世界三大美女の1人である楊貴妃も
好んで食べていたと言われています。
 

ナツメの歴史

日本には伝わったのは、
奈良時代と考えられています。
『万葉集』にはナツメが登場する歌があります。
 
玉掃たまはばき 刈り来鎌麻呂かままろ
 むろの木となつめもとと かき掃かむため
-現代語訳-
玉箒を刈って来い鎌麻呂よ、
むろの木と棗の木の下を掃除するのだから
 
・梨棗黍に粟
 つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く
-現代語訳-
(なし)・棗(なつめ)・黍(きび)に粟(あわ)と次々と実っても、離れた君と今は逢えないけれど、蔓を延び続ける蔓を伸ばす葛のように後には逢えるよ、葵の花が咲く頃には
 
甘い物が少なかった当時の日本では、
大事な甘味料として珍重され、
盛んに栽培されたようです。
『延喜式』には、各地から干しナツメが
集められた記録が残っています。
 
 
平安時代の『本草和名』(ほんぞうわみょう)には
「奈都女」と和名が記され、
薬用として利用されていたようです。
江戸時代の貝原益軒の『大和本草』には、
「毎年実を豊穣に付けるので、
 貧しい人は沢山植えて飢えを助くべし」
という記述があります。
 
ただ果樹としては
日本の気候に適さなかったことから
積極的な栽培はされず、
庭木などとして観賞用に栽培されました。
 

ナツメとナツメヤシ

「ナツメ」と「ナツメヤシ」は、
どちらもドライフルーツとして
出回っていることが多い食材で、
名前も見た目もよく似ているのですが、
種類も味も原産も全く別の果物です。
 
ナツメ(棗)
クロウメモドキ科の、China北部を原産地とする
果実です。
どちらかというと低い温度を好んで育ちます。
古来から生薬にも使われ、東洋の美女である
楊貴妃も好んで食べていたそうです。
China、韓国でよく食べられています。
 
乾燥ナツメの赤い外皮は少し硬く、
中の黄色い果実はフワフワした食感です。
生のナツメはリンゴのような食感です。
ほんのり甘い優しい味をしています。
 
ナツメヤシ(デーツ)
 
ヤシ科の果物。アフリカや中東が原産地。
砂漠や乾燥地帯でも育つことが出来、
北アフリカや中東でよく食べられる果物です。
 
 
キリスト教中心の欧州にも広く知られており、
聖母マリアも食べていたと言われています。
エジプトのクレオパトラも愛したそうです。
 
 
乾燥デーツは茶褐色の実をしていて、
干し柿やプルーンに似た
ネットリした食感をしていて、
しっかりした強い甘味が特徴です。
 

生薬の「大棗」(たいそう)

ナツメの実を乾燥させたものが、
生薬の「大棗」(たいそう)です。
 
『神農本草経』の上品には、
「心腹の邪気をつかさどる。
 中を安んじ、脾を養い、十二経を助け、
 胃気を平にし、九竅を通じ、気少なきもの、
 津液少なきもの、身中不足するもの、大驚、
 四肢重きものを補い、百薬を和す。
 久しく服すれば身を軽くし、年を長じる」
と収載されています。
 
「大棗」(たいそう)を含む漢方薬と言えば、
「葛根湯」、
「補中益気湯」(ほちゅうえっきとう)
「甘麦大棗湯」(かんばくたいそうとう)
「平胃散」(へいいさん)
「苓桂甘棗湯」(りょうけいかんそうとう)
「小柴胡湯」(しょうさいことう)
「半夏瀉心湯」(はんげしゃしんとう)などが
あります。
 

ナツメの栄養成分

葉酸やナイアシンなどのビタミンB群、
カリウム・リン・カルシウムなどのミネラル類、食物繊維など栄養価の高いです。
 
腸内環境を改善する『食物繊維』
「ナツメ」に含まれる食物繊維は、
「ごぼう」の2倍以上もあります。
これはドライフルーツの中でもトップクラス。
 
貧血予防に効果抜群の『鉄分』
「ナツメ」は、鉄を多く含むと言われる
「プルーン」の1.5倍の鉄を含んでいます。
更に葉酸や銅が含まれていることで、
効率良く造血に働くと言えます。
 
健康維持に重要な働きをするビタミン『パントテン酸』
ビタミンB群の1種である「パントテン酸」は、
食事から取った炭水化物などの代謝を促し、
エネルギー産生を助ける働きがあります。
その他にも善玉コレステロールを増やしたり、
ホルモンや免疫抗体を作る働きなど、
重要な働きを多く持っています。
 
造血のビタミン『葉酸』
葉酸は「造血のビタミン」とも呼ばれます。
またDNAやRNAなどの核酸やタンパク質の合成を促進し、細胞の産生や再生を助けます。
 
生薬としてのなつめの重要成分『サポニン』
コレステロールを除去したり、
体内で血栓をつくり動脈硬化の原因となる
過酸化脂質の生成を抑制する効果があります。
 

ナツメの効果効能

「ナツメ」の主な作用は、
緊張の緩和・鎮静・滋養強壮・利尿です。
筋肉の緊張や神経過敏、咳や体の痛みを
和らげる働きがあります。
 
体を温める
ナツメには体を温める作用があり、
漢方では風邪の初期に使われる「葛根湯」や「桂枝湯」に配合されています。
 
緊張の緩和や鎮静作用
「パントテン酸」には、
副腎皮質ホルモンの働きを促し、
ストレスを和らげ、ストレスへの抵抗力を
高める働きがあります。
イライラや不眠などの心身の疲れにも有効です。
 
ダイエット効果
「食物繊維」が豊富なため、
便秘の予防・解消効果が期待出来ます。
更に「カリウム」も含まれることから、
余分な水分を出してむくみ解消してくれます。また「サポニン」は、余分な脂肪の蓄積を
抑える効果があるとされていることから、
肥満を予防する効能が期待出来ます。
 
貧血予防
乾燥ナツメ100gあたり1.5gもの鉄分を含むほか、赤血球を作り出すのに欠かせない成分である葉酸も豊富で、貧血や鉄欠乏症に効果があるとされています。
 
エイジングケア効果
ビタミンB群の1種「パントテン酸」には、
ビタミンCの働きを助ける役割をしています。
ビタミンCは、お肌のハリや髪の毛のツヤに
重要なコラーゲン生成に重要な成分です。
 
またナツメの皮には抗酸化作用を持つ
「ポリフェノール」を豊富に含んでおり、
老化や生活習慣病などから体を守ってくれる
エイジングケア効果も注目されています。
 
免疫機能を強化
「パントテン酸」には、免疫抗体を作ることで花粉症を軽減する効果があると言われています。
「ジシフスサポニン」は、免疫機能を強化してウイルスから身体を守る働きがあります。
 
 
Data
 ・学 名:Zizyphus jujuba
 ・生薬名:大棗(たいそう)
 ・英 名:jujube またはChinese date
 ・科 名:クロウメモドキ科
 ・使用部位:果実、種子、葉
 ・原産地:南ヨーロッパまたは西南アジア
 
<主な成分>
  食物繊維、パントテン酸、
  ビタミンB群(葉酸やナイアシンなど)
  鉄分、カルシウム、カリウムやカルシウム、
  サポニン、ベンジルアルコール配糖体
  
<作用>
  健胃、鎮静、緩和、強壮、補気、補血