日本のハーブ
日本各地の野山を白い花で彩るコブシは、
種蒔きや田植えの時期を知らせる花として、
古くから農耕と密接な関係がありました。
コブシは花の時期が終わると
さくらんぼのような大きな果実をつけるのですが、
この様子が子供の握り拳(こぶし)のように見えることから、
「コブシ」と呼ばれるようになりました。
樹の形が美しく整っていることから、
庭木・街路樹として植栽される他、
樹皮を付けたままのコブシの木を建材として、
侘び寂を取り入れる茶室などの柱に用いたりします。
6枚の花びらにはレモンのような柑橘系の良い香りがあります。
良い香りがするのは花だけでなく、枝や葉も同じく香りがします。
花の蕾は鼻炎や鼻詰まりの効果があるので、
漢方では「辛夷(しんい)」という漢方薬に配合されており、
花は香水の原料にもなります。
鼻炎や花粉症、蓄膿症には煎じ液を服用する他、
鎮静作用もあるため、風邪による頭痛にもよいとされます。
赤い果実などを集めて焼酎などに漬けておくと、
一風変わった香りの果実酒を作ることが出来ます。
但し、樹皮は有毒なので注意を要します。
- 学 名:Magnolia kobus
- 別 名:コブシハジカミ、ヤマアララギ、タウチザクラ
- 科 名:モクレン科
- 原 産 地:日本
- 使 用 部 分:蕾
- 香り・風味:良い香りがあるが、辛味と苦味がある
- 生 薬 名:辛夷
- 主 な 成 分:オイゲノール、メチルカビコール、
サフロール、シネオール、α-ピネン - 主 な 作 用:鎮静、鎮痛、抗炎症
- 注 意:コブシの樹皮には神経毒のアルカロイドが
含まれているため、取り扱いには注意が必要